腰痛とコルセット・サポートベルト
エビデンス
その1
ウォールマート168店舗の13,873名を対象にした6ヶ月間におよぶ世界最大規模の前向きコホート研究によると、腰サポートベルトは資材運搬従事者の腰痛発症率も腰痛による労災件数も減少させないことが明らかとなった。http://1.usa.gov/14wOjWq
89店舗ではサポートベルト(伸縮性のナイロン素材でできた、肩紐なしのウエストにフィットする調節可能なベルトで、先端部分はマジックテープ、背中の部分はメッシュ)の着用を義務づけ、79店舗では従業員の自由意思に任せました。コルセットやサポートベルトはファッションのひとつに過ぎません。それでも支持する人々はこの腰痛予防効果を立証する責任があります。我々はすべての労働者のために、効果のない介入ではなく効果のある介入を勧めるべきです。
その2
大手航空会社の手荷物ハンドラー642名を対象に、重量挙げ用ベルト群・1時間のトレーニング群・ベルト+トレーニング群・無介入群を比較したRCTによると、4群間の腰痛発症率・欠勤日数・就労制限日数・労災申請件数に差はなかった。http://1.usa.gov/13EOieQ
腰部コルセットやサポートベルトに何らかの効果があるというエビデンスがないのと同様に、害をおよぼすというエビデンスもありません。しかし、こうした衣服の一種に過ぎないもので腰痛を予防できるという間違った印象を労働者に与える可能性があるので、医療従事者は腰部コルセットやサポートベルトを推奨すべきではありません。
考え方
予防という観点では、
コルセットをすることで、常に腰を気にすることになり腰痛を引き起こしかねないので勧められません。
治療という観点では、
治療効果が証明できていませんし、筋力が落ちるという、マイナスも証明できていません。
腰痛に対して、プラスもマイナスもないということです。
臨床的には
基本は使用しません。
ただし、動けいないときにコルセットを巻くことで動けるようになる人がいます。
このような場合は、使用をお勧めします。
治療で重要なのは、日常生活を送ることですから、巻かずに動けないでいるより、巻いて動いた方が良いと考えるからです。
パフォーマンスという観点では、
力が入りやすくなるので、必要に応じて使用すると良いと考えます。
新しい腰痛・坐骨神経痛の概念に基ずく治療が有効です。
腰痛・坐骨神経痛がどういうものか?
どういう症状がでるのか?原因は何なのか?有効な治療は?やってはいけないことは?どのくらいの期間で治るのか? 等々
ご存知でしょうか?
聞きかじった知識や自分自身の体験などの限られた情報を基に考えて、対処していませんか?
腰痛・坐骨神経痛が治らずに長引いている原因を自ら作ってしまっている可能性があります。
より真実に近い科学的事実に基づき考えることが重要です。
その上で、何をするのか自由に選択されると良いと思います。
このような実証研究によって得られた事実を元にして、再構成された新しい腰痛・坐骨神経痛の概念に基づく治療が有効です。