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画像診断(X線、CT、MRI)でわかっていること
お悩み相談室

公開日:2022/12/19

更新日:2023/01/04

なせ?

 日本では、腰痛患者さんに対して画像検査を行うことを決まり切ったものとして行われています。

 その一方で海外に目を向けると、実施率は30%程です。それでも無駄な画像検査があるということで、下げる方向で研究が進んでします。

 ここでは、画像検査をすることでどんな効果が望めるのか、リスクがあるのかをお伝えします。

画像診断(X線、CT、MRI)
でわかっていること

エビデンス1

 腰下肢痛患者に対する早期画像検査(X線・CT・MRI)の有効性に関するRCT(ランダム化比較試験)を詳細に分析した結果、レッドフラッグのない患者に画像検査を行なっても臨床転帰は改善しないことが判明。医師は腰下肢痛患者の画像検査を控えるべき。

 

レッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者に画像検査を行なっても、症状改善に繋がらないことが第一級の証拠(体系的レビュー&メタ分析)が示しているのです。

こちらから不必要な画像検査を要求しないようにしましょう。

エビデンス2

 腰痛患者101名を早期X線撮影群と教育的介入群に割り付けたRCT(ランダム化比較試験)の結果、両群間の重篤疾患・改善率・機能障害・満足度に差は認められなかったことから、患者の不安・不満・機能障害を招かずにX線撮影をやめて医療費の削減は可能。

 

 世界各国の腰痛診療ガイドラインがルーチンな画像検査は行なってはならないと勧告しています。

 ですから日本以外の国では全体の約30%しか画像検査を行なっていません。

エビデンス3

 腰痛患者782名を対象としたMRIかCTを早期に使用した場合の臨床転帰と費用対効果に関するRCT(ランダム化比較試験)では、早期画像検査による臨床転帰の改善は認められず費用対効果が低いことが判明。

 X線撮影だけでなくMRIやCTも役立たないい。

 

 レントゲンもCTもMRIも腰痛の改善には役立たないことが科学的に証明されています。

エビデンス4
 腰痛患者380名をX線撮影群とMRI群に割り付けたRCT(ランダム化較試験)によると、両群間の活動障害・改善率・再発頻度などに差は認められなかった

 医師も患者もMRIを好むが手術件数が増えて医療費が高騰する。
 
 レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者に画像診断を行なうと不必要な手術件数が増えて医療費の高騰を招きます。
エビデンス5

 腰痛患者421名を対象に腰部X線撮影群と非撮影群を9ヶ月間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、両群間の治療成績に差は認められなかったものの、X線撮影群は治療への満足度が高かった。医師はX線撮影に頼らず満足度の向上を目指すべき。

 いかに患者教育が重要かを明らかにした論文。もちろん医師の努力も必要でしょうけど、患者自身が考え方を変えなければより効果的な腰痛治療は実現しないかもしれません。

エビデンス6

 腰痛患者659名をX線撮影群と非撮影群に割り付けて1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)の結果、両群間の身体機能・疼痛・活動障害の改善率に差は認められなかった。ガイドラインは腰痛患者の腰部X線撮影を避けるよう勧告している。

エビデンス7

 腰下肢痛患者246名を対象にMRI所見と保存療法の治療成績について2年間追跡した結果、椎間板ヘルニアは腰痛患者の57%、下肢痛患者の65%に検出されたものの、治療成績とヘルニアのタイプ、大きさ、活動障害は無関係だった。

 

画像検査で認められる椎間板ヘルニアのタイプやその大きさは、症状や治療成績とは無関係だという証拠です。

エビデンス8

 一般住民3,529名を対象にマルチスライスCTで腰部の椎間関節症(OA)と腰痛との関連を調査した結果、椎間関節症の検出率は年齢とともに上昇したものの、いずれの椎間レベルにおいても腰痛との間に関連は見出せなかった

 

 変形性脊椎症や椎間関節症候群というレッテルはただの幻想です。幻想を相手に闘いを挑んでも勝ち目はありません。というより無意味な闘いです。

エビデンス9

 椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて、保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。

 

 腰椎の手術は腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、耐え難い下肢痛が持続している患者に限定すべきです。

エビデンス10

 慢性腰痛(3ヶ月以上持続)患者63名を対象に腰部椎間関節の変形をCTで調べた結果、痛みを有する患者と無症状の患者との間に有意差が認められなかったことから、CTは腰部椎間関節症の診断法として役立たないことが判明

 

 これは椎間関節ブロック注射に関する研究で判明した事実ですけど、AHCPR(米国医療政策研究局)が発表した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』でも指摘されているように、椎間関節症候群など存在しないのです。

エビデンス11

 医療行為の中で必要のない画像検査が行なわれているのは事実。CTによる放射線被曝だけでも米国で発症するがんの2%の原因になっている。リスクとベネフィットを考えると不適切なCTやX線撮影を制限することで生命を救える可能性がある。

 

全がん患者の2%がCTに起因すると大騒ぎしていますけど、日本のCT保有台数は世界一でアメリカの7倍に達しています。

エビデンス12

 日本の原爆被爆者データベースから先進15ヶ国の画像検査による放射線被曝量と発がんリスクを推計した結果、検査回数も発がんリスクも日本が世界一であることが判明。全がん患者の4.4%(約1万人)が画像検査に起因している可能性あり。

 

世界中が驚愕した有名な論文なのに、なぜか日本ではほとんど報道されませんでした。

エビデンス13

 1回の全身CTによる放射線被曝量は、広島・長崎の爆心地から3.2キロの地点で被爆した生存者とほぼ同じで、がんによる死亡リスクが増加するのは明らか。CTの保有台数は日本が世界一でアメリカの7倍、イギリスの16倍にも達している。

エビデンス14

 306ヶ所の医療機関からメディケア受給者をランダムに抽出して分析した結果、CTとMRIの実施率は地域によって異なっており、画像検査実施率が最も高い地域は手術実施率も最も高いことが判明。画像検査の妥当性には疑問がある。

 

腰椎の画像検査実施率が高いとそれに伴って手術実施率も医療費も高くなりますが、患者の臨床転帰は改善するどころかむしろ悪化する傾向にあります。

エビデンス15

 画像検査実施率の上昇は、7年間で硬膜外(腰部・仙骨)ブロックの医療費が629%増加したこと、および10年間で椎間関節ブックの医療費が543%増加したことと明らかに関連。

 

 画像検査が増えるとどうしても過剰診療につながり医療費の高騰を招きます。世界各国の腰痛診療ガイドラインがレッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者の画像検査は行なうべからずと強く勧告している理由のひとつです。

エビデンス16

 レッドフラッグのない腰痛患者に対するルーチンな早期画像検査にメリットのないことは明らかだが、それを一人の患者に説明するのに30~45分かかるために診療スケジュールが大混乱する。時は金なりが過剰な画像検査の最大の理由。

エビデンス17

 腰痛や坐骨神経痛を患った経験がない人でも、特に年齢が高くなれば、椎間板変性・ヘルニア・脊柱管狭窄といった構造上の異常所見があるのは珍しくない

エビデンス18

 149人の勤労者におけるMRIを調べたところ画像所見と腰痛の関連は乏しく、しかも腰痛既往者の47%は正常所見だった

エビデンス19

 重篤な基礎疾患のない腰痛患者に画像検査を行っても臨床転帰は改善しない。そのため、ルーチンな画像検査はやめるべき。

考え方

 腰痛に対しての画像検査の役割は、レッドフラッグサインがあった場合に、緊急に治療が必要な重症の病気を除外する為に行われます。

 画像検査に望める効果はこの一点です。

 上記がない場合、腰痛の改善に役に立ちませんし、むしろマイナスに働きます

 腰痛の原因が解るわけでもないし、治療成績も変わらない、無意味ということです。 

 

 

 レッド・フラッグ・サイン(red flag sign:赤旗徴候)とは、緊急に治療が必要な、重症の病気を警戒する必要がある徴候や症状のことを言います。 

①発症年齢が20歳未満または50歳以上
②時間や活動性に関係のない腰痛
③胸部痛
④がん、ステロイド治療、HIV感染の既往
⑤栄養不良
⑥体重減少
⑦広範囲に及ぶ神経症状
⑧構築性脊椎変形
⑨発熱

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