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腰痛・坐骨神経痛の画像検査でわかること

公開日:2022/12/19
更新日:2025/10/03

腰痛・坐骨神経痛の画像検査

 日本では、腰痛・坐骨神経痛の患者さんに対して画像検査(X線、CT、MRI)を行うことを決まり切ったものとして行われています。

 その一方で海外に目を向けると、実施率は30%程です。それでも無駄な画像検査(X線、CT、MRI)があるということで、実施率を下げる方向で研究が進んでします。

 ここでは、画像検査(X線、CT、MRI)をすることでどんな効果が望めるのか、リスクがあるのかをお伝えします。

腰痛・坐骨神経痛の画像検査のエビデンス

エビデンス1

 急性・亜急性の腰痛に対する早期画像検査(X線・CT・MRI)の有効性に関するRCT(ランダム化比較試験)を詳細に分析した結果、レッドフラッグのない患者に画像検査を行なっても臨床転帰は改善しないことが判明。医師は腰下肢痛患者の画像検査を控えるべき。

 レッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者に画像検査を行なっても、症状改善に繋がらないことが第一級の証拠(体系的レビュー&メタ分析)が示しているのです。

 こちらから不必要な画像検査を要求しないようにしましょう。

引用元:
01 May 2009 - Australasian Musculoskeletal Medicine (Australian Association of Musculoskeletal Medicine) - Vol. 14, Iss: 1, pp 26

エビデンス2

 カイロプラクティック治療を求める腰痛患者の臨床転帰に対する画像診断法の影響を前向き縦断観察で調査
 
 カイロプラクティック治療を受けている腰痛患者では、画像診断を行っても臨床転帰の改善は得られなかった 

 これらの知見は、ルーチン画像検査に対する現在のガイドライン勧告がカイロプラクティック診療にも適用されていることを裏付けています 

引用元:
23 Nov 2021 - Chiropractic & Manual Therapies (BioMed Central) - Vol. 29, Iss: 1, pp 46

エビデンス3

 腰痛が新たに発生してから6週間以内に、腰椎のMRI検査を実施したその後への影響を調査

結果:

  1. 手術の増加:背部手術の発生率が高い(早期MRIを実施しなかったエピソードでは 0.12% に対して 1.48%)
  2. オピオイド使用: 処方オピオイドの使用の増加 (35.1% 対 28.6%) 
  3. 疼痛スコアが高い: 最終疼痛スコアが高い (3.99 対 3.87) 
  4. 費用の増加: 急性期医療費の増加(5560ドルに対して8082ドル)


 この研究は、ガイドラインに反して、合併症のない腰痛に対する早期MRI検査は、医療利用の増加、費用の増加、オピオイド使用の増加、患者の治療成績の悪化につながることが明らかになり、確立されたガイドラインの遵守を改善する必要性が強調されている。

 引用元:
28 Sep 2020 - Journal of General Internal Medicine (Springer International Publishing) - Vol. 35, Iss: 12, pp 3605-3612

エビデンス4

 腰痛患者への画像検査が直接費用の増加、医療利用の増加、または欠勤につながるかどうかを調査したシステマティック・レビュー

 臨床ガイドラインでは健康上の利点がないため、腰痛のルーチン画像検査は推奨されていないが、この系統的レビューでは、このような画像検査は経済的負担、その後の医学的介入、および離職時間の面で悪影響をもたらす可能性があることを示唆。

引用元:
22 Feb 2019 - European Spine Journal (Eur Spine J) - Vol. 28, Iss: 5, pp 937-950

エビデンス5

 米国医師会(ACP)や米国疼痛学会(APS)などの主要な医療機関が重度または進行性の神経障害を示す患者、または重篤な基礎疾患を示唆する徴候や症状を示す患者にのみ画像検査を実施することを推奨。

 慢性腰痛にはルーチンの脊椎画像検査が一般的ですが、重度の神経障害や重篤な基礎疾患の徴候などの特定の危険信号が見られない限り、専門家のガイドラインでは行わないようアドバイス

 上記の様に推奨する理由

  1.  臨床成績: ルーチン画像検査によって腰痛患者の臨床転帰が改善することは示されていない 。
  2.  患者への危害: 不必要な画像検査は、X線やCTスキャンによる放射線被曝などの潜在的な危害に患者をさらす 
  3.  費用面での影響: 定期的な画像検査は、腰痛の管理にかかる総コストを大幅に増加させる。 

     
 

引用元:
01 Jan 2016(Springer, Cham) - pp 407-413

エビデンス6

 救急科における腰痛の画像検査について 

 腰痛または坐骨神経痛の患者を対象とした早期の画像検査(X線/CT/MRI)では、危険信号がない場合、臨床成績は改善しない

 不適切な画像検査は費用の増加、オピオイド使用量の増加、不必要な手術につながる可能性があることが確認されている。この為に画像検査の注文を控えるよう医師に推奨。

 
 腰痛の治療は画像に頼るのではなく、「基本」に戻すべきだと示唆しています。

  1. 救急科で画像検査を行っても急性腰痛の治療は変わらないことを患者に説明する
  2. 活動を維持する方法について患者さんを教育する
  3. 安静にしないようアドバイスする
  4. 症例の約 90% が数週間以内に改善することを伝え患者を安心させる

 このアプローチは、即時の画像検査と比較して、疼痛または機能に関する短期または長期の治療成績に差がない

引用元:
01 Feb 2023 - Emergency medicine news (Lippincott Williams & Wilkins) - Vol. 45, Iss: 2, pp 

エビデンス7

 「レッドフラッグ」の症状が現れない限り、最初の6週間は腰痛のルーチン画像検査を避けるという勧告を支持するデータを提示。

理由:

  1.  腰椎の早期画像検査を受けた患者と腰痛の通常の治療を受けた患者との間で、疼痛または機能に有意差は見られない
  2.  腰痛の早期画像検査は、患者の「ラベル付け」、偶発的所見のための不必要なフォローアップ検査、放射線被ばく、不必要な手術、多額の費用など、いくつかの有害転帰を伴う

結論:
 急性腰痛に対しては日常的な画像検査を行うべきではないと結論。急性腰痛の患者の画像検査を行わないことで、医療提供者は臨床成績に悪影響を及ぼすことなく、被害と費用を削減できる

引用元:
09 Jul 2012 - JAMA Internal Medicine (American Medical Association) - Vol. 172, Iss: 13, pp 

エビデンス8

 腰痛患者101名を早期X線撮影群と教育的介入群に割り付けたRCT(ランダム化比較試験)の結果、両群間の重篤疾患・改善率・機能障害・満足度に差は認められなかったことから、患者の不安・不満・機能障害を招かずにX線撮影をやめて医療費の削減は可能

 
引用元:

01 Jan 1987 - JAMA Internal Medicine (American Medical Association) - Vol. 147, Iss: 1, pp

エビデンス9

 腰痛患者782名を対象としたMRIかCTを早期に使用した場合の臨床転帰と費用対効果に関するRCT(ランダム化比較試験)では、早期画像検査による臨床転帰の改善は認められず費用対効果が低いことが判明。

 X線撮影だけでなくMRIやCTも役立たないい。

 レントゲンもCTもMRIも腰痛の改善には役立たないことが科学的に証明されています。

引用元:
01 May 2004 - Radiology (Radiological Society of North America) - Vol. 231, Iss: 2, pp 343-351

エビデンス10

 目的:X線検査に比べて、迅速なMRI検査の方が患者さんの治療成績が良いのか、それとも費用対効果の高い代替手段なのかを判断すること  

 腰痛患者380名をX線撮影群とMRI群に割り付けたRCT(ランダム化較試験)によると、両群間の活動障害・改善率・再発頻度などに差は認められなかった

 医師も患者もMRIを好むが手術件数が増えて医療費が高騰する。

 レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者に画像診断を行なうと不必要な手術件数が増えて医療費の高騰を招きます。

引用元:
04 Jun 2003 - JAMA (American Medical Association) - Vol. 289, Iss: 21, pp 2810-2818 

エビデンス11

 腰痛が6週間以上続いた患者421名を対象に腰部X線撮影群と非撮影群を9ヶ月間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、両群間の治療成績に差は認められなかったものの、X線撮影群は治療への満足度が高かった。

 しかし、満足度が高まったとはいえ、X線撮影によって患者の心配が軽減されたり、重篤な基礎疾患に対する安心感が増したりすることはない。また、X線検査を受けた患者さんはその後3か月以内にかかりつけ医に相談する傾向が高かった。

 医師はX線撮影に頼るのではなく、徹底した臨床評価と明確なコミュニケーションを通じて、患者の情報ニーズを効果的に満たし、安心感を与えることに重点を置くべき

 いかに患者教育が重要かを明らかにした論文。もちろん医師の努力も必要でしょうけど、患者自身が考え方を変えなければより効果的な腰痛治療は実現しないかもしれません。

 結論:腰痛が6週間以上続いた患者であっても、腰部X線検査は臨床的利益がなく、費用対効果も高くない。


引用元:
01 Jan 2001 - Health Technology Assessment (Health Technol Assess) - Vol. 5, Iss: 30, pp 1-6

エビデンス12

 腰痛患者659名をX線撮影群と非撮影群に割り付けて1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)の結果、両群間の身体機能・疼痛・活動障害の改善率に差は認められなかった

 しかし、6週間と1年のフォローアップポイントの両方で、心理的健康状態のわずかな改善が認められた。軽微な心理的改善の可能性は、処置に伴うかなりの放射線量と注意深く比較検討すべき

  ガイドラインは腰痛患者の腰部X線撮影を避けるよう勧告している。

引用元:
01 Jun 2002 - British Journal of General Practice (Royal College of General Practitioners) - Vol. 52, Iss: 479, pp 469-474

エビデンス13

 急性腰痛と神経根症:MRI所見の予後予測および転帰への影響

 
 腰痛・坐骨神経痛の患者246名を対象にMRI所見と保存療法の治療成績について2年間追跡した結果、椎間板ヘルニアは腰痛患者の57%、坐骨神経痛患者の65%に検出されたものの、治療成績とヘルニアのタイプ、大きさ、活動障害は無関係だった。
 
 
 画像検査で認められる椎間板ヘルニアのタイプやその大きさは、症状や治療成績とは無関係だという証拠です。
 
 また、急性腰痛または神経根症について早期のMR画像検査をしても、患者の治療成績は改善されず、幸福感には悪影響を及ぼす可能性があることが研究により示唆
 
 
引用元:
01 Nov 2005 - Radiology (Radiological Society of North America) - Vol. 237, Iss: 2, pp 597-6

エビデンス14

  一般住民3,529名を対象にマルチスライスCTで腰部の椎間関節症(OA)と腰痛との関連を調査した結果、椎間関節症の検出率は年齢とともに上昇したものの、いずれの椎間レベルにおいても腰痛との間に関連は見出せなかった

 変形性脊椎症や椎間関節症候群というレッテルはただの幻想です。幻想を相手に闘いを挑んでも勝ち目はありません。というより無意味な闘いです。

引用元:
01 Nov 2008 - Spine (NIH Public Access) - Vol. 33, Iss: 23, pp 2560-2565

エビデンス15

 椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて、保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。

 腰椎の手術は腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、耐え難い下肢痛が持続している患者に限定すべきです。

エビデンス16

 慢性腰痛(3ヶ月以上持続)患者63名を対象に腰部椎間関節の変形をCTで調べた結果、痛みを有する患者と無症状の患者との間に有意差が認められなかったことから、CTは腰部椎間関節症の診断法として役立たないことが判明

 

 これは椎間関節ブロック注射に関する研究で判明した事実ですけど、AHCPR(米国医療政策研究局)が発表した『成人の急性腰痛診療ガイドライン』でも指摘されているように、椎間関節症候群など存在しないのです。

引用元:
15 Apr 1995 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 20, Iss: 8, pp 907-912

エビデンス17

目的:

慢性腰痛に苦しむ患者の保存的治療におけるCT画像の予後的価値を評価すること。

方法:
 従来の理学療法や鎮痛薬で痛みが反応せず、症状が少なくとも3か月以上続いている慢性腰痛の患者73人が参加。臨床検査と脊椎CTスキャンの両方を受け、その後、患者は4週間にわたる集学的リハビリテーションプログラムに参加。

 CT所見に基づいた分類:

グループ1: 画像検査正常 (患者26人) 
グループ2: 脊柱管狭窄症 (患者20人) 
グループ3: 椎間板の後部膨らみ、突起、押し出し、または椎間板の隔離 (27人の患者)

結果:

3つのグループすべてで観察された臨床的改善はほぼ同じ。

結論:
 CT所見が異なる患者(正常、狭窄、または椎間板の問題)でも、集学的リハビリテーションプログラムの実施後も同様の改善率を示したことが明らかになり、CT画像検査はこの特定の状況において予後的に有意な価値を持たない

 引用元:
01 Jan 1996 - Rheumatology International (Rheumatol Int) - Vol. 16, Iss: 1, pp 19-21

エビデンス18

 医療行為の中で必要のない画像検査が行なわれているのは事実。CTによる放射線被曝だけでも米国で発症するがんの2%の原因になっている。リスクとベネフィットを考えると不適切なCTやX線撮影を制限することで生命を救える可能性がある。

 全がん患者の2%がCTに起因すると大騒ぎしていますけど、日本のCT保有台数は世界一でアメリカの7倍に達しています。

 引用元:
06 Dec 2007 - BMJ  - Vol. 335, Iss: 7631, pp 1182-1184

エビデンス19

 日本の原爆被爆者データベースから先進15ヶ国の画像検査による放射線被曝量と発がんリスクを推計した結果、検査回数も発がんリスクも日本が世界一であることが判明。全がん患者の4.4%(約1万人)が画像検査に起因している可能性あり。

 世界中が驚愕した有名な論文なのに、なぜか日本ではほとんど報道されませんでした。

エビデンス20

 1回の全身CTによる放射線被曝量は、広島・長崎の爆心地から3.2キロの地点で被爆した生存者とほぼ同じで、がんによる死亡リスクが増加するのは明らか。CTの保有台数は日本が世界一でアメリカの7倍、イギリスの16倍にも達している。

 1回の全身CT検査で肺や胃などの臓器に与えられる推定線量は14~21 mGyで、原爆被爆者のがんによる死亡率の増加が直接認められる線量領域に含まれる。

引用元:
01 Sep 2004 - Radiology (Radiological Society of North America) - Vol. 232, Iss: 3, pp 735-7

エビデンス21

 306ヶ所の医療機関からメディケア受給者をランダムに抽出して分析した結果、CTとMRIの実施率は地域によって異なっており、画像検査実施率が最も高い地域は手術実施率も最も高いことが判明。画像検査の妥当性には疑問がある。

 腰椎の画像検査実施率が高いとそれに伴って手術実施率も医療費も高くなりますが、患者の臨床転帰は改善するどころかむしろ悪化する傾向にあります。

引用元:
15 Mar 2003 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 28, Iss: 6, pp 616-620

エビデンス22

 未検証の検査や治療法の利用が増えても、それに対応して患者の治療成績が改善されない
 慢性腰痛に対する過剰治療の問題が高まっている。
 

  1. 腰部 MRI : メディケア受給者のスキャン回数が 307% 増加
  2.  硬膜外ステロイド注射: メディケア支出が 629% 増加
  3. オピオイド: 腰痛への支出が 423% 増加
  4. 脊椎固定術: 発生率が 220% 増加

 
引用元:
01 Jan 2009 - Journal of the American Board of Family ... (American Board of Family Medicine) - Vol. 22, Iss: 1, pp 62-68

エビデンス23

 画像検査実施率の上昇は、7年間で硬膜外(腰部・仙骨)ブロックの医療費が629%増加したこと、および10年間で椎間関節ブックの医療費が543%増加したことと明らかに関連。

 画像検査が増えるとどうしても過剰診療につながり医療費の高騰を招きます。世界各国の腰痛診療ガイドラインがレッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者の画像検査は行なうべからずと強く勧告している理由のひとつです。

エビデンス24

 レッドフラッグのない腰痛患者に対するルーチンな早期画像検査にメリットのないことは明らかだが、それを一人の患者に説明するのに30~45分かかるために診療スケジュールが大混乱する。時は金なりが過剰な画像検査の最大の理由

エビデンス25

 外来診療における腰痛の診断と治療について論じ、慢性化や過剰診断を避けるための適切な診断アプローチと治療戦略の重要性を強調。

 腰痛のほとんどの症例、特に「危険信号」が見られない場合はMRIやCTスキャンなどの早期の脊椎画像検査が不要な場合が多い 。

  1.  画像検査では、痛みの明確な原因を特定できない
  2.  また、患者さんの病気に対する認識が誇張され、慢性疼痛の「罠」に陥る可能性がある。


 治療は、痛みを管理し慢性化を予防するための患者教育、身体活動、対象を絞った薬物療法に重点を置く。

 

引用元:
01 Sep 2024 - Klinicist (ABV-press) - Vol. 18, Iss: 2, pp 48-59

エビデンス26

 腰痛や坐骨神経痛を患った経験がない人でも、特に年齢が高くなれば、椎間板変性・ヘルニア・脊柱管狭窄といった構造上の異常所見があるのは珍しくない。

エビデンス27

 腰痛の無い人における脊椎変性の画像所見(MRIまたはCT)の有病率の系統的レビュー

目的:
腰痛を感じていない人の一般的な脊椎変性疾患の年齢別有病率を推定すること

結果:
腰痛を感じていない人の

  1. 椎間板変性の有病率は、20歳群の37%から80歳群の96%へと増加。
  2. 椎間板膨隆の有病率は、20歳群の30%から80歳群の84%へ増加。
  3. 椎間板突出の有病率は、20歳群の29%から80歳群の43%へ増加。
  4. 線維輪裂傷の有病率は、20歳群の19%から80歳群の29%へ増加。


結論:
 脊椎変性の画像所見は、腰痛のない人に高い割合で認められ、加齢とともに増加する。多くの画像所見に基づく変性所見は、正常な加齢過程の一部であり、疼痛とは関連しない可能性が高い。これらの画像所見は、患者の臨床状態を考慮して解釈されなければならない

引用元:
01 Apr 2015 - American Journal of Neuroradiology (American Society of Neuroradiology) - Vol. 36, Iss: 4, pp 811-816

エビデンス28

目的:
腰痛、坐骨神経痛、または神経性行を経験したことがない人の腰椎異常の有病率を調査すること

方法:
67人の無症状の被験者を対象にMRI検査を実施

結果:

  • 約3分の1の被験者に顕著な異常所見が認められた。
     
  • 60歳未満の被験者では、20%に椎間板ヘルニア、1例に脊柱管狭窄症が認められた。
     
  • 60歳以上のグループでは、約57%に異常所見が認められた。(36%に椎間板ヘルニア、21%に脊柱管狭窄症)
     
  • 20~39歳の被験者の35%、60~80歳の被験者では1人を除く全員において、少なくとも1つの腰椎レベルで椎間板の変性または膨隆が認められた。


結論:
 無症状の被験者におけるこれらの所見を踏まえ、手術治療を検討する前に、MRI(磁気共鳴画像)上の異常は年齢および臨床的徴候・症状と厳密に関連付けられるべきであると結論付けた。

引用元:
Scott D. Boden,T S Dina,Nicholas J. Patronas,Sam W. Wiesel 01 Jan 1990

エビデンス29

  5つの異なる職業(自動車生産労働者、救急隊員、事務職員、病院搬送員、醸造所配送員)149人(20~30歳78名、31~58歳71名)の勤労者におけるMRIを調査。

結論:
MRI検査は腰痛リスクのある者を特定できる適切な採用前スクリーニング手法とはならない

結果:

  • 被験者の34%は腰痛の経験がなかった。
  • 12か月後、89名の男性で検査を再実施した。腰椎のMRI所見には加齢に伴う差異が認められた。椎間板変性はL5/S1で最も頻度が高く、高齢群(52%)では若年群(27%)に比べ有意に高頻度であった(P<0.01)。
     
  • 腰痛は高齢群でより多く認められたが、腰痛と椎間板変性との間に関連性は認められなかった
     
  • 5つの職業グループ間で腰椎MRI所見に差異は認められなかった。
     
  • 全体では45%が「異常」腰椎(椎間板変性、椎間板膨隆・突出、椎間関節肥厚、神経根圧迫の所見)を有していた。腰椎のMRI所見と腰痛の間に明確な関連性は認められなかった
     
  • 無症状の被験者の32%が「異常」な腰椎を有し、腰痛を経験した全被験者の47%が「正常」な腰椎を有していた
     
  • 12か月の追跡期間中、13名が初めて腰痛を発症した。しかし、腰痛発症を説明し得るような腰椎MRI所見の変化は認められなかった。
     

引用元:
01 Jan 1997 - European Spine Journal (Springer) - Vol. 6, Iss: 2, pp 106-114

エビデンス30

 重篤な基礎疾患のない腰痛患者に画像検査を行っても臨床転帰は改善しない。そのため、ルーチンな画像検査はやめるべき。

エビデンス31

 ■変形性脊椎症と腰痛の関連性について

腰椎の変形が腰痛の原因でないことは半世紀以上も前から証明されてきた

最も古い対照試験は1953年に実施された腰痛患者100名と健常者100名の腰部X線写真を比較したもので、

両群間の変形性脊椎症の検出率に差はなかった。

エビデンス32

 ■変形性脊椎症と腰痛の関連性について

腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、

両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論

エビデンス33

 ■腰痛と変形性脊椎症の関連性について

 60歳の一般住民666名を対象に胸椎と腰椎のX線写真を分析した結果、

腰痛経験者の58.7%に、
腰痛未経験者の57.5%に

変形性脊椎症が確認されたが、両群間の検出率に差はなかった。

老化よる脊椎の変形は腰痛の原因ではない

エビデンス34

 ■腰痛と腰部のX線写真の異常所見の関連性について

・港湾労働就職希望者208名、
・急性腰痛を発症した港湾労働者207名、
・6ヶ月以上続いている慢性腰痛患者200名

を対象に、腰部のX線写真の異常検出率を比較した結果、

3群間の加齢による異常検出率に差は認められなかった。

X線検査の異常所見と急性腰痛、慢性疼痛は無関係

エビデンス35

 ■腰痛と老化による解剖学的変化の関連性について

腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した研究によると、

両群間に

  • 変形性脊椎症
  • 骨粗鬆症
  • 椎体圧迫骨折

などの異常検出率に差は認められなかった。

したがって老化による解剖学的変化が腰痛の原因とは考えられないと結論。

エビデンス36

 ■腰部椎間板造影について

 腰痛経験もなくX線所見も異常のないボランティア受刑者50名を対象に、腰部椎間板造影を行なったところ、全例に異常所見が確認された。

 重大な合併症の危険を冒してまで、侵襲的な椎間板造影を行なうメリットはどこにあるのか? 

エビデンス37

 ■画像所見と腰痛との間に関連性について

1985年~1995年に発表された腰痛疾患と画像検査に関する論文672件をレビューした結果、画像所見と腰痛との間に関連があるという証拠は見出せなかった

レッドフラッグのない腰痛患者の画像検査は無意味である可能性大。 

引用元:
01 Jan 1996 - European Spine Journal (Eur Spine J) - Vol. 5, Iss: 1, pp 2-22

エビデンス38

目的:
腰痛患者における腰椎X線撮影が、臨床転帰の改善や医療満足度の向上と関連しないという仮説を検証 

方法:
腰痛期間中央値10週間の腰痛患者421名をX線撮影群と非撮影群に割り付け、9ヶ月間にわたって追跡調査

結果:
非撮影群に比べるとX線撮影群はケアへの満足度は、無作為化後9か月時点ではX線検査群で高かったが、3か月時点では差が認められなかった。

また、

  • 痛みの持続期間
  • 活動障害
  • 健康状態の成績が悪く
  • 受診回数も多かった
     

結論:
6週間以上持続する腰痛を有する患者の腰椎X線検査は、患者の機能改善、疼痛の重症度、または全体的な健康状態の向上とは関連しない

課題:
X線検査に頼らずに満足度を高めることである。
 

引用元:

17 Feb 2001 - BMJ (BMJ Group) - Vol. 322, Iss: 7283, pp 400-405

エビデンス39

 腰のX線撮影による放射線被曝量について

腰のX線撮影による放射線被曝量は、胸の写真に換算すると150回分に相当し、 4方向から撮影した場合、卵巣への被曝量は6年~98年間毎日、胸の写真を撮った被曝量に匹敵

エビデンス40

 ■側湾症と腰痛の関連性について

腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、

腰痛患者の

  • 30%に脊柱側彎症が、
  • 1%に前彎過剰が、
  • 22%に前彎減少が見られ、

健常者の

  • 45.5%に脊柱側彎症が、
  • 2.5%に前彎過剰が、
  • 22%に前彎減少が見られた。

 曇りの無い目でみれば、側湾症がある方が、腰痛になりづらいと言えます

エビデンス41

 ”レッドフラッグがない限り画像検査を行なうな"と

各国の腰痛ガイドラインが勧告しているが、基準が甘すぎるという議論が勃発。

 腰痛は予後良好の疾患であり、安静臥床は避けるべきという情報伝達を妨げ、過剰診療に繋がる恐れがあるから

エビデンス42

 ■反り腰(腰部前弯)と腰痛の関連性について

  • 急性腰痛患者200名、
  • 慢性腰痛患者200名、
  • 健常者200名

を対象にX線撮影で仙骨底角を比較した結果、

3群間に差はなかったことから、

腰部前彎と腰痛とは一切無関係なので、医師は反り腰(腰部前弯)に関するコメントを控えるべきと警告

 

引用元:
01 Mar 1985 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 10, Iss: 2, pp 154-155

エビデンス43

 ■妊娠と椎間板変性の関連性について

 妊婦54名と非妊婦41名(17人の経産期の非妊婦、24人の未産婦)をMRI検査して比較した結果、

●椎間板異常は

  • 妊婦群で53%
  • 非妊婦群で54%

●椎間板ヘルニアは

  • 妊婦群で9%
  • 非妊婦群で10%

●椎間板膨隆は

  • 両群とも44%

 有意差はなかったことから、妊娠は安全。

 腰仙椎間板の問題は出産可能年齢の女性によく見られることであり、妊娠自体がこの椎間板異常の可能性を高めることはない

引用元:
01 Jan 1989 - Obstetrical & Gynecological Survey (Lippincott Williams and Wilkins) - Vol. 44

エビデンス44

 ■椎間板造影のリスクについて

 椎間板造影は全米で年間20万回以上行なわれている侵襲的検査法だが、10年間にわたる前向きコホート研究によって、椎間板造影は椎間板の変性を加速させていることが判明。 


穿刺・注入を受けた椎間板は対照群(非注入)椎間板と比較して変性所見の進行が顕著であった

  1. 椎間板変性の進行は椎間板造影群で54椎間板(35%)、対照群で21椎間板(14%)
  2. 新規椎間板ヘルニアは造影群55例に対し対照群22例
  3. 新規椎間板ヘルニアは、椎間板造影検査時の椎間板外膜穿刺側で不均衡に多く認められた。
  4. 椎間板高さと椎間板信号強度の定量的測定でも、椎間板高さの有意な減少と信号強度の有意な低下が認められた。


結論:
最新の技術を用いても椎間板穿刺は椎間板構造を変化させる

引用元:
01 Oct 2009 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 34, Iss: 21, pp 2338-2345

エビデンス45

 骨盤の非対称性(歪み)と腰痛について 

■発症後1年以内の腰痛患者144名と健常者138名を対象に、骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた研究により、どのような臨床的意義においても、

骨盤の非対称性(歪み)と腰痛とは関連していないことが証明されている。

エビデンス46

 脊椎分離症と腰下肢痛について

■18~50歳までの腰痛患者807名と健常者936名を対象に、腰部X線撮影で脊椎分離症の検出率を比較。

結果:

  • 腰痛患者群は9.2%
  • 健常者群は9.7%

だった。

脊椎分離症が腰下肢痛の原因と考えるのは非論理的。

成人の腰椎分離症と腰痛は関係ないということで、医学界ではコンセンサスが得られています

エビデンス47

 腰痛とX線写真の異常所見の検出率について

■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、

・脊椎辷り症
・腰仙移行椎
・潜在性二分脊椎
・椎間狭小
・変形性脊椎症
・脊柱側彎症
・前彎過剰
・前彎減少
・骨粗鬆症
・シュモール結節
・圧迫骨折
・骨盤傾斜

の検出率に差はない。

腰痛とX線写真の異常所見に関連性はない

エビデンス48

  腰椎すべり症と腰痛と症候性腰部脊柱管狭窄症という2つの臨床症状との関連を明らかにすること目的に、すべり症のある人とない人の間で比較。さらに、この研究では、すべりの量と症候性腰部脊柱管狭窄症の有無との関係を調査。

参加者:
平均年齢67.3歳(40歳から93歳の範囲)の男性308人と女性630人の938人 

結果:

  • 脊椎すべり症の全有病率は、サンプル全体で 15.8%、男性で 13.0%、女性で 17.1% 。男女間で有病率に統計的に有意な差はなかった。
  • 症候性腰部脊柱管狭窄症は男女ともに脊椎すべり症に関連している
  • 腰痛との関連: 脊椎すべり症と腰痛の有無との間に有意な関連は認められなかった 
  • すべりの量: すべりの量は症候性腰部脊柱管狭窄症の有無とは無関係だった


引用元:
01 Jun 2017 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 42, Iss: 11

エビデンス49

 慢性腰痛を経験している若年患者を対象に、腰仙部移行椎と二分脊椎と腰椎椎間板ヘルニアの関係を調査

腰痛が12週間以上続いた20~40歳の患者1094人が参加し、、標準的な骨盤X線写真と腰椎磁気共鳴画像法 (MRI) を用いて評価。

 患者は主に2つのグループに分けられました。グループ1は腰椎椎間板ヘルニアのない患者。グループ2は腰椎椎間板ヘルニアのある患者。これら2つのグループはさらに、非腰仙部移行椎-二分脊椎、腰仙部移行椎、および二分脊椎の3つのカテゴリーに細分。

 結果:

  1. 腰仙部移行椎と腰椎椎間板ヘルニア:腰仙部移行椎は腰椎椎間板ヘルニアのあるグループに多い。
  2. 腰仙部移行椎と痛み、および障害:腰仙部移行椎の存在により、腰椎椎間板ヘルニアの有無に関わらず、腰痛と障害のリスクが大幅に増加。
  3. 二分脊椎と痛み、および障害:二分脊椎の存在は、腰椎椎間板ヘルニアの有無に関わらず、腰痛または障害の有意な増加を示さなかった

 

引用元:
19 Jan 2017 - The Eurasian Journal of Medicine (Ataturk University School of Medicine) - Vol. 48, Iss: 3, pp 177-180

エビデンス50

 腰痛と脊椎の異常所見の関連性について

■腰痛患者100名と健常者100名を対象に腰部X線写真を比較した研究では、

両群間の
・腰仙移行椎

・脊椎辷り症

・潜在性二分脊椎

・変形性脊椎症

の検出率に差は認められなかった。

画像検査による脊椎の異常所見は本当に腰痛の原因か? 

考え方

画像検査の目的は除外診断

 腰痛に対しての画像検査の役割は、レッドフラッグサインがあった場合に、緊急に治療が必要な重症の病気を除外する為に行われます。

 画像検査に望める効果はこの一点です。

 上記がない場合、腰痛・坐骨神経痛の改善に役に立ちませんし、むしろマイナスに働きます。

 椎間板変性症やヘルニア、骨の変形などの構造異常は無症状の患者によく見られ、これらの所見は将来の痛みや障害を示すものではないことを認識することが重要です。

 腰痛・坐骨神経痛があり、椎間板変性症やヘルニア、骨の変形などの構造異常が見つかった場合でも、手術(形を整える)をしなくても多くの場合は改善します。構造異常が本当の原因なのか?・・・。椎間板や骨の形に捉われないことが重要です。

  腰痛の原因が解るわけでもないし、治療成績も変わらない、むしろ悪化するという報告もあり、無意味ということです。

 医療上で検査が必要な時というのは、治療手段が変わる可能性がある時に行われます。

 例えば、問診や理学検査によってレッド・フラッグ・サインの所見があり、その腰痛・坐骨神経痛が癌の骨への転移により引き起こされている可能性があったり、感染症によって引き起こされている可能性がある場合は、癌や感染症の治療は、全く異なることになるので、検査が必要になります。

 それらが除外出来た場合は、骨の変形があってもなくても、椎間板ヘルニアがあってもなくても治療内容は変わらないので、検査をする意味がありません。
 

 レッド・フラッグ・サイン(red flag sign:赤旗徴候)とは、緊急に治療が必要な、重症の病気を警戒する必要がある徴候や症状のことを言います。 

①発症年齢が20歳未満または50歳以上

②時間や活動性に関係のない腰痛

③胸部痛

④がん、ステロイド治療、HIV感染の既往

⑤栄養不良

⑥体重減少

⑦広範囲に及ぶ神経症状

⑧構築性脊椎変形

⑨発熱 

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