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腰痛・坐骨神経痛が治らない悪循環
お悩み相談室

公開日:2022/05/13

更新日:2024/08/28

なせ?

 色々試しているにもかかわらず治らない、長年苦しんでいる、悪化傾向にある方が多くいます。

 今、この記事を読んで下さっているあなたもそうかもしれません。

 本来、腰痛や坐骨神経痛は自己限定疾患といって、風邪やササクレと同じように治って当たり前のものです。

 では、どうして痛みは続くのでしょうか?

腰痛・坐骨神経痛
の快復を妨げる因子

 長引く理由の一つとして、心理社会的因子が研究によって注目されています。

 痛みには心理面が影響していると話すと、「気のせいっていうことですか?」とか「ストレスはないです」と語気を強めて返答を頂くことがあります。 

 ・「心理面と痛みとが結びつくイメージが出来ない」とか
 ・「原因がわからない理由を誤魔化しているのでは?」という疑いからそう言われるのかもしれません。 

 痛みの悪循環を上手に説明した「恐怖回避思考モデル」と「過活動モデル」を引用して、痛みと心理面の関係について解説します

  それによって、「イメージできるように」 また、「誤魔化しという誤解をとけるように」していきます。

そもそも痛みは純粋な感覚ではない

足裏痛い

 痛みの定義をすると「不快な感覚・情動体験」とされています。

 例えば、画鋲を足で踏んでしまった時、身体にはどんなことが起きているのでしょうか?

1,足裏から脳へ神経を使って情報が伝わります。

2,脳の中で大きく二つに分岐します。
 一つは「感覚」をつかさどる場所へ
 もう一つは「情動」をつかさどる場所です。

ですから、どんな痛みでも「痛みという感覚」だけでなく「情動(不安・恐怖等)」を同時に感じているのです。

痛みと情動の役割

警報装置

  「痛み」も「不安・恐怖」も警報装置としての役割があります。

​・「痛み」は患部へ意識を向かせるため
・「不安や恐怖」は行動を促すため   です。

 緊急事態に対応するには、「痛み」と「情動」両方必要ということです。

なぜ悪循環に陥るのか?

 不安や恐怖・痛みによって心がかき乱されて、情緒が不均衡に陥いります。すると、人はたえず情緒的に均衡を保ちたいので(恒常性)、その不均衡を解決するために行動します。

 その行動が適応行動(健康行動)なら良いのですが、身体や怪我の快復よりも、情緒の均衡を回復させることばかりに目が向いてしまうと不適応行動に繋がり、悪循環に陥りやすくなります。

 こうやって、心理面が腰痛や坐骨神経痛の慢性化に影響を与えるのです。

悪循環に陥りやすいパターン

①恐怖回避思考

恐怖回避思考

恐怖回避思考とは?

 痛みに対する不安や恐怖、腰痛や坐骨神経痛に対する悲観的なイメージから,楽観的に向き合えずに、抑うつや不眠・不活動・過度に腰を守る行動になったりする考えです。

回避行動に引き込む思考の例:

  • 痛みや不安・恐怖を過度に怖がる
  • 「痛みや不安・恐怖」を受け入れられずに逃げる
  • 直視できず目をそらす
  • 過度に重大なものと捉えてしまう
  • 無力感を覚えてしまう
  • 不快な感覚・不快な感情ばかり反芻してしまう


過度な安静(不活動)がよくない理由
 身体というのは、不活動でいると、痛覚過敏になり、より痛みを感じやすくなります。適度に身体を動かすことで、痛覚過敏が落ち着き痛みから快復していきます。つまり、不活動であることで痛みの悪化や回復の妨げをして、快復につながる活動を避けてしまっているのです。

 また、身体が快復しているのにも関わらず、いつまでも怖がって身体を動かさないでいると、回復に気が付けないというケースもあります。 

②過活動

●過活動とは?

 下記のような行動パターンです。

  • 活動のやりすぎにより、痛みが増強する
  • 活動のやりすぎにより、その後の活動を行うことが困難になる。
  • 活動のやりすぎにより、その後の休息が必要になる
  • 活動のやりすぎた後に、非機能的対処方法を使う(鎮痛剤の多量服用、ブロック注射、病院、治療院巡り、など)
  • やりすぎによって痛みが悪化することを何度も繰り返す

これを繰り返すことで、痛みの持続や悪化につながる。

●過活動に陥る理由

  • 過活動している間は、痛みが抑えられたり、不安を忘れられたりする。
  • 「○○すべき」、「○○しなければならない」という強迫観念
  • 過去の、受験、仕事、スポーツなどで過活動することで、良い成績や評価を得たという成功体験

脳の関与

脳の構造

「痛み」や「不安・恐怖」に過度に反応してしまうのが良くないのですが、そうなりやすいワケが「脳の仕組み」にあります。

 脳の中に「偏桃体」というところがあります。
ここは、「闘争か逃走か反応」といって、生命の危機に陥ったときに「闘う」か「逃げる」かを判断するところになります。

 腰痛や坐骨神経痛が慢性化している人は、ここが興奮し過活動になっていることが確認されています。

 また、その偏桃体の暴走を抑える理性を司る背外側前頭前野の働きが弱まったり、萎縮が認められたりしています。

結果、「偏桃体」の働きによって、戦い続けたり、逃げ続けてしまいやすいのです。

腰痛・坐骨神経痛の対処方法

認知行動療法

 メカニズムは分かった。

「ではどうしたら良いの?」についてお話します。

●恐怖回避思考タイプの対処方法

 科学的に正しい知識を身に着けて、心配ごとを減らしたり。不安や恐怖に振り回されないように楽観的に向き合うことで回復していきます。

過活動タイプの対処方法

  • ペーシング

 「痛み」や「疲れ」を理由に活動を休んだり、中止するのではなく、時間や回数で区切り、「痛みがなくても」「疲れていなくとも」休憩をとる

 そうすることで、「痛み」「疲れ」を感じる程度や回数が減り、心と生活に余裕が生まれます。

 

●「悪循環」を断ち切り、快復するには、
身体の治療と合わせて

1,痛みを「正しく」受け入れる・認知する
2,正しい考え・行動

が必要になってきます。

 先ほどお伝えしたように「痛み」や「不安・恐怖」は警報装置であり、正常な体の反応です。
その正常な反応と、「闘争」しても勝つことはできません。また「逃走」しても逃げ切ることもできません。

 変わらないものを変えようとしても、失敗体験を積み重ねて、より治りづらくなっていくだけです。自分の考えや行動を「痛みのメカニズム」や「身体の仕組み」に合わせて変えることで回復していきます。

 正しく向き合って、警報装置が鳴らなくてもよい状態を作り出すこと「行動」に目を向け、行動することが一番の治療になります。

 実際、慢性化した腰痛・坐骨神経痛に薬や注射、手術などの受け身の治療を単独で行っても有効ではありません。

 臭いものに蓋をするような、その場しのぎだけでは幸せの前借りをして、あとでツケを払うことになり、ますます悪循環の渦に巻き込まれていってしまいます。

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院長の新幡です

 長引いた痛みを一人で治すのは困難なことが多いです。

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