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公開日:2022/06/28
更新日:2022/12/09
椎間板ヘルニアの手術成績についてお伝えします。
保存療法と手術療法の成績の比較、
手術方法の違いによる治療成績の比較、
キモパパイン注射との比較した調査結果をお伝えします。
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者60名を対象に、ラブ法群と顕微鏡下髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、術中の出血量、合併症、入院日数、欠勤日数、改善率など、いずれも両群の間に差は認められない。
新たに開発された術式なら従来の成績を凌駕するだろうと思いきや、脊椎固定術の例でも分かるように必ずしもそうとは限りません。
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者52名を対象に、ラブ法群とキモパパイン注入群の術後成績を1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、ラブ法群は85%でキモパパイン群は46%の改善率だった。
腰痛の改善率も特にラブ法群が優れていた。
昔から行なわれてきたラブ法は強し。先人たちの偉大さに驚かされます。
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者141名を対象に、キモパパイン注入群と経皮的髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、6ヶ月後と1年後のどの時点においても改善率はキモパパイン注入群の方が優れていた。
プロゴルファーの岡本綾子選手が受けたことで知られるキモパパイン(タンパク分解酵素)注入療法は、日本でよく行なわれている経皮的髄核摘出術より有効ですが日本では認可されていません。
ただしラブ法より効果がないことに注意してください。
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。
長期成績は両群とも同じ。
椎間板ヘルニアに対する手術でもっとも優れているラブ法でさえ、長期成績は保存療法と変わりありません。
レッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛はグリーンライト(自己限定性疾患)だからです。
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者69名を対象に、椎弓切除術群と椎弓切除術+固定術群の術後成績を3年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、優または良と評価できた割合は椎弓切除術群が71%で椎弓切除術+固定術群が53%だった。
椎間板ヘルニアに対する脊椎固定術の術後成績は悪いことが明らかにされているのに、なぜか脊椎外科医はやめるどころか盛んに脊椎固定術を勧めます。
椎間板ヘルニアと診断された下肢痛患者328名をチュブラーレトラクター椎間板摘出術群(新開発の低侵襲手術)と標準的顕微鏡下椎間板摘出群に割り付けたRCT(ランダム化比較試験)によると、疼痛改善率はチュブラー手術群より顕微鏡手術群の方が優れていた。
日本でも最近行なわれるようになったチュブラー手術ですけれども改善率は顕微鏡手術に軍配が上がりました。
また1年後の回復状況を良と評価した患者はチュブラー手術群が69%で顕微鏡手術群が79%、合併症はチュブラー手術群の方が多く、再発や再手術は顕微鏡手術群の方が多かった。新開発の手術法が優れているとはいえない。
いずれにしろ椎間板ヘルニアの手術は期待するほどの成績は得られないようです。手術を決断する前に、腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法を試みてみるべきです。
2年間にわたる追跡調査によると、坐骨神経痛を有する椎間板ヘルニアの手術は保存療法より有益とはいえない。
職場復帰率や長期活動障害率においても手術の優位性は認められなかった。
坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの一過性でしかない。
ノルウェーのRCTでは1~4年間優位性が持続したが 、オランダのRCTでは1年未満だった。
アスリートが早期復帰を望むと正常な臨床判断ができなくなる。
椎間板手術に与えられたチャンスは最初の1回だけ。
手術を繰り返すたびにさらに悪化するため、椎間板切除術の適応に少しでも疑わしい点があれば手術を行なうべきではない。
メーン州内の3つの地域で椎間板ヘルニアか脊柱管狭窄症によって手術を受けた患者665名を2~4年間追跡した前向き研究によると、
手術実施率の高い地域の治療成績は手術実施率の低い地域よりも劣ることが明らかとなった。
腰部椎間板ヘルニアと腰部変形性脊椎症の手術に関するRCT(ランダム化比較試験)のメタ分析では、椎間板手術の本来の役割は症状の消失を促すことでしかなく、自然治癒を上回る何らかのベネフィット(有益性)があるというエビデンスはないと結論。
これはコクランレビューですけれども、有痛性椎間板ヘルニアの臨床経過は、少なくとも長期的には良好だということを全ての研究者が認めています。
新潟がんセンター整形外科が行なった後ろ向き研究によると、手術をしなくても非内包性椎間板ヘルニア(椎間板脱出・遊離脱出)は約8週間で自然に消失する事実が明らかとなり、この方針に従って椎間板手術の年間件数を50%低下させることに成功。
症状出現後8週間以上経過してから手術を行なった場合、線維輪を突破した非内包性椎間板ヘルニアは稀にしか見つからなかったことを契機にこの研究が始まりました。有痛性の非内包性椎間板ヘルニアは8週間の忍耐が役立つというわけです。
腰痛も下肢痛も経験したことのない健常者67名を対象にMRIで腰部を調べた結果、椎間板変性・変形性脊椎症・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症のような構造上の変化はごく一般的な所見であることが判明したことから、手術の選択は慎重であるべき。
この事実は腰痛が職業病だという考え方では説明がつきませんし、そもそも構造上の変化が腰痛や下肢痛を引き起こすという確たる証拠はないのです。
腰椎手術予定の患者122名に心理テストを実施し、疼痛・機能障害・就労状況を1年間追跡調査した結果、心理的苦痛(不安や抑うつ)が少ないほうが疼痛改善率も職場復帰率も高かった。心理的苦痛は慢性腰痛の治療成績を左右する。
手術適応になる患者の心理状態が腰椎手術の治療成績に大きな影響を与えることが明らかになったわけですが、手術適応の決定においては解剖学的考察より心理学的因子のほうが重要である可能性が浮上したことになります。
腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群の手術成績に関する研究をメタ分析した結果、発症後48時間以内に除圧術を行なったほうが48時間以降に行なうより知覚障害・運動麻痺・膀胱直腸障害の改善率は良好であることが明らかとなった。
椎間板ヘルニアの緊急手術として唯一適応が認められている馬尾症候群は、手術の時期を逸すると生涯にわたってサドル麻痺や膀胱直腸障害(失禁)が残ることがあります。したがって、馬尾症候群の診断後は速やかに手術するべきであり、48時間という期限が迫っている場合は医療関係者側のスケジュールを調整している猶予はありません。それがたとえ真夜中であっても。
腰痛疾患で再手術を受けた患者179名を対象とした研究によると、手術の成功率は2回目で45%(20%は悪化)、3回目では25%(25%は悪化)、4回目では15%(45%は悪化)あることが判明。最初の手術が最後のチャンス。
再手術によって症状が改善しない見込みが50%以上あると聞かされても患者は手術を選択するでしょうか? 医師自身が患者だったらこれほど確率の低い賭けに乗るでしょうか? だからこそ腰椎手術は最初の手術が最後のチャンスだといわれるのです。
306ヶ所の医療機関からメディケア受給者をランダムに抽出して分析した結果、CTとMRIの実施率は地域によって異なっており、画像検査実施率が最も高い地域は手術実施率も最も高いことが判明。画像検査の妥当性には疑問がある。
腰椎の画像検査実施率が高いとそれに伴って手術実施率も医療費も高くなりますが、患者の臨床転帰は改善するどころかむしろ悪化する傾向にあります。
椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。
椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。
椎間板摘出術を受けた患者46名を2年間にわたって追跡調査した結果、職場復帰には心理的因子(抑うつ状態)と職業上の心理社会的因子(職場での精神的ストレス)が深く関与していて、画像所見や臨床症状は無関係であることが判明。
椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。
椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。
1966年~1991年に発表された椎間板ヘルニアに対する脊椎固定術に関する47件の論文をレビューしたところ、脊椎固定術によって優または良と評価できた割合は平均68%だったことが判明。
平均70%のプラシーボとほぼ同等。
長引いた痛みを一人で治すのは困難なことが多いです。
困ったときは自身で判断せずに適切な処置を受けるために専門家に相談しましょう。
もし、お近くにお住まいで、困っているならば、一度ひまわり接骨院までお問い合わせください。腰痛・坐骨神経痛の専門家の新幡が、ご相談に乗ります。
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