脊柱管狭窄症に対する外科的手術の有効性は？

　脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者８８名を対象に減圧椎弓切除術の成績を６年間追跡した結果、

 １年後の改善率は８９％だったが６年後には５７％に低下し１７％は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より悪い。

　脊柱管狭窄症の自然経過は比較的良好で、馬尾症候群の疑いがなければ手術を遅らせても問題ないことが明らかになっています。

　手術を決断する際、必ずしも全例が完治するわけではないことを知っておくべきです。
手術の期待値の調整として、・完治ではなく改善を目標・個人差があることを理解することです。

　脊柱管狭窄症への減圧椎弓切除術に関する論文７４件を厳密に検討した結果、

　優または良と評価できたのは平均６４％だったが、論文によっては２６％～１００％もの開きがあり、研究デザインにも不備が多いためその有効性は証明できない。

　プラシーボの平均有効率が７０％であることを考えると６４％は少々寂しい気がします。

　 36% は望ましい改善が見られない可能性があるので、術後の痛みと障害の軽減について、現実的な期待値を設定することが重要です。

　いずれにしろ馬尾症候群の疑いがないのであれば、脊柱管狭窄症だからといって安易に手術すべきではないということです。

引用元：
01 Jan 1992 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 17, Iss: 1, pp 1-8　

　腰部脊柱管狭窄症による椎弓切除術を受けた患者８８名を約１０年間追跡調査した結果、

　７５％が手術の結果に満足していたものの、２３％が再手術を受け、３３％が重度の腰痛を訴え、５３％が２ブロック程度の距離も歩けないことが判明。

　腰部脊柱管狭窄症の手術成績は年月が経つにつれて悪化するということです。ちなみに２０％の患者が大腿部・下腿部・足部に強い痛みを訴えていました。

引用元：
01 Jan 1996 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 21, Iss: 1, pp 92-98

　腰部脊柱管狭窄症の外科的治療と非手術的治療の長期的転帰（６年間）を調査したランダム化比較試験

　１、腰痛・下肢痛による日常生活活動の障害は手術群が有利
　２、長期フォローアップでは手術群と非手術群で脚または背中の痛みの強さに有意差なし
　３、研究中のどの時点でも、2つの治療群間で歩行能力に有意差なし

　
引用元：
15 Jan 2011 - European Spine Journal (Springer) - Vol. 20, Iss: 7, pp 1174-1181

　　腰部脊柱管狭窄症に対するさまざまな外科的アプローチの長期的有効性を評価

　72人中25人（34.7%）のかなりの割合の患者が、毎日の鎮痛薬の使用を必要とする重度の持続的な背中および/または脚の痛みを経験。

　腰部脊柱管の減圧手術の長期的転帰は、器具による固定術の有無にかかわらず、以前に文献で報告されていたものほど好ましくないと結論。 

　腰部脊柱管狭窄症の手術後何年も経過しても、かなりの数の患者が満足せず、慢性的な痛みを経験したことを浮き彫りにしている。

引用元：

01 Oct 1999 - Neurosurgical Review (Springer-Verlag) - Vol. 22, Iss: 2, pp 102-106

　手術さえすれば良くなるという考え方は危険です。手術は決して最高の治療手段ではありません。担当の先生に術後の成績をしっかり説明を受け、納得の上で受けてください。