腰痛・坐骨神経痛に対する牽引療法の効果

■6週間以上持続する腰痛患者151名を対象とした

・牽引群と
・シャムトリートメント(擬似牽引)群に

割り付けたランダム化比較試験(RCT)によると、

・3ヵ月後と
・6ヵ月後

のどの時点においても、両群間の疼痛軽減率に差は認められなかった。

・電動連続牽引は、非特異的な腰痛の患者さんには有効な治療法ではないよう。牽引療法のルーチン使用は腰痛に対する一次治療または単独の介入として再考すべき。牽引療法の提供に費やされるリソース（時間、機器、費用）は、エビデンスに基づく他の治療に割り当てたほうがよい可能性。

引用元：
01 Dec 1997 - Spine (Spine (Phila Pa 1976)) - Vol. 22, Iss: 23, pp 2756-2762

■腰痛・坐骨神経痛患者を対象とした

・牽引群と
・シャムトリートメント(擬似牽引)群

に割り付けた二重盲検ランダム化比較試験によると、

両群の間に疼痛や理学所見の差は認められなかった。

引用元：
01 May 1986 - Rheumatology (Oxford University Press) - Vol. 25, Iss: 2, pp 181-183

　慢性腰痛・坐骨神経痛を患っている患者さんを対象に、仰向けまたはうつ伏せ行う機械式腰椎牽引の効果を、従来の理学療法（PT）と比較。

　結果から、機械的な牽引を考慮する場合、うつ伏せでの牽引が好ましい選択肢である可能性が示唆

引用元：

01 Jan 2018 - American Journal of Physical Medicine & ... (Am J Phys Med Rehabil) - Vol. 97,

　坐骨神経痛を伴う場合と伴わない腰痛  に対する牽引療法の有効性を評価するために、コクラン・コラボレーションの枠組みの中で実施された系統的レビュー

　腰痛（坐骨神経痛の有無にかかわらず）に対する単独治療として行うことは推奨できない。
標準的な理学療法プログラムに牽引療法を追加しても治療成績に大きな違いや改善が見られない。

　有効性のエビデンスが強い他の治療にリソース（時間、機器、費用）を配分したほうがよい可能性がある。
ただし、肯定的な提言はないものの、この論文では、トラクションは腰痛・坐骨神経痛にとって全く効果がないという、断固とした一般的な否定的な結論を導き出さないように警告。

引用元：
15 Jun 2006 - Spine (Lippincott Williams and Wilkins) - Vol. 31, Iss: 14, pp 1591-1599

　■頚部痛と腰痛に対する牽引に関する
7件のRCT(ランダム化比較試験)をレビュー(批判的に吟味)した結果、

どの研究からも牽引の有効性は認められなかった。

　■最新の「2020年公開のロンドン 国立医療技術評価機構(nice) の腰痛診療ガイドライン」では、

・坐骨神経痛の有無にかかわらず、腰痛の管理に牽引を提供しない。

とされています

　以前から現在にいたるまで牽引療法は行われていますが、エビデンス上は効果を証明できないようです。

　牽引療法を受けたお陰で治った、効いたと思っていても、実は勘違いの可能性が高いです。

　治療を受けた方が感じる効果とは：”自然治癒力”＋”暗示効果”＋”治療の効果”を合わせたものになります。

 　エビデンスで効果を認められないということは、感じた効果のうちの”治療の効果”がないということです。若しくは、”自然治癒力”＋”暗示効果”の効果を上回ることが出来ないということです。

​　整形外科的な痛みであれば、痛みの強度が頂点に達すると、治りを阻害する・悪化させるような誤った行動をしていなければ、自然治癒力によって頂点から減少に転じていきます。そして、ある程度の痛みが弱まった状態でとどまったり、治ったりしていきます。

　多くの方は、痛みの頂点付近で、どうしようもなくなったり、不安や恐怖・強い不快感を感じるタイミングで、病院や接骨院に通院して牽引療法を受ける事と思います。

　すると、上記のような自然治癒力の効果なのにもかかわらず、牽引療法の効果と勘違いしてしまったりします。

　受けた治療そのものに治療効果があるかどうかの判定を下すのは、ご自身の感覚だけは難しいです。

　ここでご紹介したような比較対照試験の結果を利用するのがいいです。

　せっかく同じ時間をかけるなら、より効果が望めるエビデンスがあるものを優先していきたいですね。