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薬の効果:慢性腰痛

公開日:2026/02/14
更新日:2026/00/00

慢性腰痛の薬の効果

 慢性的な腰痛に対する薬物療法の有効性と安全性を多角的に検証したものです。

  非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は短期間の痛みを緩和する第一選択肢として推奨されていますが、一方でアセトアミノフェンには十分な効果が認められていません。 

 オピオイドは一時的な改善は見込めるものの、依存や副作用のリスクから厳格な制限が求められています。また、抗うつ薬抗てんかん薬などは、特定の症状を除いて効果が限定的であると指摘されています。

 総じて、薬物はあくまで補助的な手段と位置づけられており、運動療法などの非薬物療法と組み合わせた慎重な運用が推奨されています。

目次

  1. 慢性腰痛に対して最も推奨される第一選択薬はなんですか?

    1. 主な理由

    2. 注意点と推奨される使用方法

 

  1. NSAIDs以外の第2選択薬にはどのようなものがありますか?

    1. オピオイド(弱オピオイド・強オピオイド)

    2. 抗うつ薬(SNRIなど)

    3. 抗てんかん薬(ガバペンチノイド)

    4. 外用薬(貼り薬など)

    5. まとめと注意点
       

  2. 抗うつ薬や抗てんかん薬は腰痛治療にどのように活用されますか?

    1. 抗うつ薬の活用

    2. 抗てんかん薬(ガバペンチノイド)の活用

    3. 共通の活用原則と注意点

 

  1. 慢性腰痛にアセトアミノフェンが推奨されない理由は何ですか?

    1. 効果が認められない(有効性の欠如)

    2. 根拠となるデータの不足

    3. 急性腰痛においても効果が乏しい

    4. 主要なガイドラインの評価

 

  1. 筋弛緩薬が慢性腰痛ではなく「急性」に推奨される理由は?

    1. 急性腰痛に対する有効性の証明

    2. 慢性腰痛におけるエビデンスの不足

    3. 副作用と耐容性の問題

    4. 結論としての位置づけ

 

  1. NSAIDsを長期服用する場合の胃腸や腎臓へのリスクを教えて下さい。

    1. 胃腸(GI)へのリスク

    2. 腎臓へのリスク

    3. その他の重要なリスク(心血管系)

    4. 長期服用における推奨事項

 

  1. 薬物療法と併用すべき非薬物療法には何がありますか?

    1. 推奨される主な非薬物療法

    2. 非薬物療法の位置づけ

    3. まとめ

       

  2. 運動療法を薬物療法と組み合わせる具体的なメリットは?

    1. 薬物療法の「限定的な効果」を補完できる

    2. 薬剤の長期服用によるリスクを軽減できる

    3. 「自己管理能力(セルフマネジメント)」の向上

    4.  身体機能の維持と改善

    5. 結論としての治療戦略

       

  3. セルフマネジメントには具体的にどのような戦略がありますか?

    1. 運動療法との統合 (Integration with Exercise)

    2. 現実的な目標設定 (Setting Realistic Goals)

    3. 薬物への過度な依存の回避 (Reducing Sole Reliance on Meds)

    4. 頻繁な再評価とモニタリング (Frequent Reassessment)

       

  1. 薬物療法を中止するタイミングや判断基準を教えてください。

    1. あらかじめ設定した目標に達しない場合

    2. 副作用のリスクが有益性を上回る場合

    3. 計画された「短期間」が経過したとき

    4. 頻繁な再評価(モニタリング)の結果

    5. まとめ
       

慢性腰痛に対して最も推奨される第一選択薬は何ですか?

 慢性腰痛に対して最も推奨される第一選択薬について解説します。

結論から述べますと、慢性腰痛に対する薬物療法において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)第一選択薬とされています。

 主な理由

• 有効性: NSAIDs(非選択的およびCOX-2選択的の両方)は、短期間の痛みに対して、わずかではあるものの、偽薬(プラセボ)と比較して統計的に有意で一貫した軽減効果(100点満点中6〜7点程度の減少)を示すことが確認されています,。また、一部の解析では身体機能のわずかな改善も認められています。

• アセトアミノフェンとの比較: かつては一般的であったアセトアミノフェンについては、慢性腰痛に対する有意な有益性が確認されておらず、単独での使用は推奨されていません,,。

• 他の薬剤との比較: オピオイドは短期間の鎮痛効果は認められるものの、副作用のリスクが大きく、他の治療が失敗した場合の第2・第3選択肢とされています,,。また、抗うつ薬や抗てんかん薬、筋弛緩薬についても、慢性的な非特異的腰痛に対する効果は限定的、あるいは一貫していません,。

注意点と推奨される使用方法

 NSAIDsを使用する際には、以下の点に留意する必要があります:

• 副作用のリスク: 胃腸障害、腎機能障害、心血管リスクなどの副作用が知られており、患者個別のリスク評価が不可欠です,。

• 使用期間: エビデンスの多くは短期間(数週間から数ヶ月)のものです。そのため、効果のある最小用量を、必要最小限の期間だけ使用し、頻繁に効果を再評価することが推奨されています,。

• 非薬物療法の併用: 薬物療法のみに頼るのではなく、運動療法や自己管理(セルフマネジメント)といった非薬物療法との併用が重要視されています。

 なお、ご提示いただいた資料内には、日本整形外科学会(JOA)などの日本のガイドラインにおける具体的な位置づけについては、「十分な証拠がない」あるいは「記載がない」とされており、詳細を確認することはできませんでした。

NSAIDs以外の第2選択薬にはどのようなものがありますか?

 慢性腰痛において、第一選択薬であるNSAIDsで十分な効果が得られない場合や、副作用で使用できない場合に検討される「第2選択薬」あるいは「追加の選択肢」について、参考文献に基づき解説します。

主な薬剤としては、オピオイド、抗うつ薬(特にデュロキセチン)、外用薬などが挙げられます。

オピオイド(弱オピオイド・強オピオイド)

 オピオイドは、一般的に第2選択肢または第3選択肢として位置づけられています。

• 対象: 非薬物療法やNSAIDsなどの非オピオイド療法が失敗し、痛みが難治性で重度な特定の患者に限定して検討されます。

• 主な薬剤: トラマドール(弱オピオイド)やタペンタドールなどが含まれます,。

• 効果と注意点: 短期間の鎮痛効果は認められていますが、便秘、吐き気、めまいなどの副作用や、依存・過剰摂取のリスクがあるため、使用は慎重に行う必要があります,,。

抗うつ薬(SNRIなど)

 抗うつ薬の中でも、特に**SNRI(デュロキセチン)**が選択肢となります。

• 位置づけ: 慢性腰痛に対して中程度の効果が認められており、米国家庭医学会(ACP)などのガイドラインでも薬物療法の選択肢の一つとして挙げられています,。

• 推奨されるケース: 痛みが持続し、神経障害性の特徴やうつ病の併発がある場合に第2選択薬として検討されることがあります。

• 注意点: 三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)については、近年の研究では慢性腰痛に対して一貫した臨床的利益が確認されておらず、ルーチンでの使用は推奨されていません,。

 抗てんかん薬(ガバペンチノイド)

 ガバペンチンやプレガバリンなどの薬剤です。

• 現状: 非特異的な慢性腰痛に対する単独療法としての有効性は不十分、あるいはエビデンスがないとされています,。

• 使用例: ただし、NSAIDsとの併用で効果を示した試験もあり、神経障害性の要素が強い場合に検討されることがありますが、第一選択薬としては推奨されません,。

 外用薬(貼り薬など)

 • リドカインパッチ(5%): 局所的な神経障害性疼痛の成分がある場合に有効であるとされています,。全身への影響が少ないため、経口薬の副作用が懸念される場合の補助的治療として検討されます,。

まとめと注意点

 これらの第2選択薬を検討する際は、以下の原則が強調されています:

• 短期間の試用: いずれの薬剤もエビデンスの多くは短期間(数週間〜3ヶ月未満)のものです。目標を設定し、効果が見られない場合は中止を検討します,。

• 非薬物療法の優先: 薬物療法はあくまで補助的なものとし、運動療法や自己管理といった非薬物療法を継続することが重要です。

 なお、これらの薬剤の日本における詳細な推奨度については、提示された資料内に日本整形外科学会(JOA)の具体的な見解が記載されていないため、日本の臨床現場での正確な位置づけについては主治医にご相談ください。

抗うつ薬や抗てんかん薬は腰痛治療にどのように活用されますか?

 参考文献に基づき、慢性腰痛治療における抗うつ薬と抗てんかん薬の活用方法について解説します。

これらの薬剤は、慢性的な非特異的腰痛に対して一貫した大きな効果は認められておらず、一般的には第一選択薬(NSAIDsなど)や非薬物療法で十分な効果が得られない場合の補助的な選択肢として活用されます。

 抗うつ薬の活用

 抗うつ薬の中でも、種類によって推奨度が異なります。

• SNRI(デュロキセチン):

    ◦ 位置づけ: 慢性腰痛に対して**中程度の効果(わずかな改善)**が認められており、米国家庭医学会(ACP)などのガイドラインでも薬物療法の選択肢の一つとして挙げられています。

    ◦ 検討されるケース: 痛みが持続し、神経障害性の特徴(しびれや鋭い痛みなど)がある場合や、うつ病を併発している場合に、第2選択薬として検討されます。

• 三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど):

    ◦ かつては使用されていましたが、近年の研究では慢性腰痛に対して臨床的に重要な利益は確認されておらず、現在はルーチンでの使用は推奨されていません。

抗てんかん薬(ガバペンチノイド)の活用

 ガバペンチンやプレガバリンなどの薬剤が含まれます。

• 位置づけ: 非特異的な慢性腰痛に対する単独療法(その薬だけを使うこと)としての有効性は不十分、あるいは証拠がないとされています。そのため、単独でのルーチンな使用は推奨されていません。

• 活用方法: 一部の試験では、NSAIDs(抗炎症薬)と併用することで効果を示した例があり、特定の状況下で組み合わせて使用されることがあります。また、神経障害性疼痛の要素が強い場合に検討されることがありますが、第一選択薬ではありません。

共通の活用原則と注意点

 これらの薬剤を導入する際は、以下の点に留意して活用されます。

• 短期間の試用: エビデンスの多くは短期間(3ヶ月未満)のものです。あらかじめ目標を設定した上で期間限定で試用し、痛みや身体機能の改善が見られない場合は中止を検討します。

• 副作用の考慮: 眠気、めまい、ふらつき、消化器症状などの副作用が生じる可能性があるため、患者への十分な説明とモニタリングが行われます。

• 非薬物療法の併用: 薬物療法はあくまで補助的なものとし、運動療法や自己管理(セルフマネジメント)などの非薬物療法と組み合わせて活用することが強調されています。

 なお、これらの薬剤の日本における具体的な推奨度(日本整形外科学会の見解など)については、資料内に詳細な記載がないため、実際の治療にあたっては主治医の判断に従ってください。

慢性腰痛にアセトアミノフェンが推奨されない理由は何ですか?

 慢性腰痛に対してアセトアミノフェンが推奨されない主な理由を解説します。

 結論から申し上げますと、アセトアミノフェンが推奨されない最大の理由は、慢性腰痛に対して「臨床的に意味のある有益性が認められていない」ためです,。

 具体的な理由は以下の通りです。

効果が認められない(有効性の欠如)

 複数のエビデンス(証拠)の統合結果により、アセトアミノフェンは慢性腰痛に対して偽薬(プラセボ)と比較して有意な効果がないことが示されています,。資料では「意味のある有益性を欠いている(lacks meaningful benefit)」と明確に述べられています。

根拠となるデータの不足

 最近のレビューやガイドラインの調査において、慢性腰痛に対するアセトアミノフェンの使用を支持する十分な証拠(データ)が見当たらないことが指摘されています。

 急性腰痛においても効果が乏しい

 慢性腰痛だけでなく、急性腰痛に対しても偽薬と比較して効果に差がないことが示されており、腰痛治療全般においてその有効性が疑問視されています。

 主要なガイドラインの評価

• 米国家庭医学会(ACP): アセトアミノフェンの効果は限定的であるとして、ルーチン(日常的)な使用を推奨していません。

• 欧州のガイダンス: 急性腰痛での効果が実証されておらず、慢性腰痛に関するエビデンスも不足していると報告しています。

• 日本整形外科学会(JOA): 資料内には、日本国内のガイドラインにおける具体的な見解を裏付ける十分な証拠は含まれていませんでした。

補足:安全性について

 アセトアミノフェンは、適切な用量であれば一般的に忍容性は高く(副作用が少なく)、安全な薬剤とされています。しかし、**「安全ではあるが、腰痛そのものには効果がない」**ため、単独での治療には推奨されないという位置づけになっています,。

 そのため、現在ではアセトアミノフェンよりも、わずかながら一貫した鎮痛効果が認められている**非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)**が第一選択薬として優先されています。

筋弛緩薬が慢性腰痛ではなく「急性」に推奨される理由は?

 筋弛緩薬が慢性腰痛ではなく、主に**「急性」の腰痛に対して推奨される理由**について解説します。

主な理由は、急性の設定における短期間の有効性が確認されている一方で、慢性腰痛に対する長期的な有効性や安全性の根拠が不足しているためです。

 急性腰痛に対する有効性の証明

 参考文献によると、筋弛緩薬は急性腰痛における短期間の痛み緩和には効果的であることが示されています。特に急激に痛みが増した際(急性増悪時)の短期間のオプションとして、米国家庭医学会(ACP)や欧州のガイドラインでも支持されています

慢性腰痛におけるエビデンスの不足

 一方で、慢性腰痛については以下の理由から推奨されていません。

• 根拠となるデータの欠如: 慢性的な使用を支持する強力なランダム化比較試験(RCT)の証拠はなく、慢性腰痛に対する有効性はほとんど証明されていません

• 限定的な利益: 慢性的な非特異的腰痛に対しては、得られる利益が限定的、あるいは一貫していないと報告されています,。

副作用と耐容性の問題

 長期間の使用を検討する上で、副作用が大きな障壁となります。

• 鎮静作用: 筋弛緩薬の一般的な副作用として**鎮静(眠気など)**が挙げられます,。

• 有害事象のリスク: 急性期の使用に関する試験でも有害事象のリスク増加が認められており、これが患者の耐容性を制限し、長期的な使用を難しくしています。

結論としての位置づけ

 以上の理由から、各国のガイドラインでは筋弛緩薬を以下のように位置づけています。

• 急性腰痛や慢性腰痛の急性増悪期において、短期間(数日から数週間)の使用に限定して推奨される,。

• 慢性腰痛に対する日常的な使用は推奨されない

 このように、筋弛緩薬は「今まさに起きている急な痛み」を一時的に和らげるための手段として活用されており、長期的な治療戦略には適さないと考えられています。

NSAIDsを長期服用する場合の胃腸や腎臓へのリスクを教えてください

 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を長期服用する際の胃腸および腎臓へのリスク、ならびに推奨される対策について解説します。

    NSAIDsは慢性腰痛の第一選択薬として推奨されていますが、服用にあたっては胃腸(GI)、腎臓(成分)、および心血管(CV)系に対する既知のリスクプロファイルに注意する必要があります。

胃腸(GI)へのリスク

 NSAIDsの服用において、胃腸障害は代表的な副作用です。

• イベントのリスク: 潰瘍や出血などの胃腸イベントのリスクが認められています。

• 薬剤による違い: セレキシブなどのCOX-2選択的阻害薬は、一部の試験において非選択的NSAIDsよりも胃腸イベントの発生率が低いことが示されています。

• 対策: 胃腸障害のリスクが高い患者に対しては、必要に応じて**胃粘膜保護薬(gastroprotection)**の併用を検討することが推奨されています。

腎臓へのリスク

 腎機能への影響も、NSAIDsの主要なリスクの一つとして明記されています。

• 個別評価の重要性: 腎機能障害のリスクがあるため、ガイドラインの著者は、患者個別のリスク評価を事前に行うよう注意を促しています。

 その他の重要なリスク(心血管系)

 胃腸や腎臓以外に、心血管(CV)リスクについても同様に注意が必要です。

• 胃腸リスクが低いとされるCOX-2選択的阻害薬であっても、心血管リスクについては他のNSAIDsと同様の考慮が必要であるとされています。

 長期服用における推奨事項

    慢性腰痛に対するNSAIDsの試験エビデンスの多くは数週間から数ヶ月の短期間のものであり、長期的な安全性については十分な証拠が不足していることが指摘されています。そのため、以下の使用原則が強調されています:

• 必要最小限の服用: 効果がある最小用量を、必要な最小期間だけ使用すること。

• 頻繁な再評価: リスクを考慮し、治療の効果と安全性を頻繁に再評価(モニタリング)すること。

• 患者教育: 医師は患者に対し、胃腸、腎臓、心血管に関するリスクについて事前に説明し、薬物療法だけに頼らず運動療法や自己管理を組み合わせるよう促すことが重要です。

 このように、NSAIDsの長期服用は潜在的なリスクを伴うため、個人の健康状態に合わせた慎重な判断と管理が求められます。

薬物療法と併用すべき非薬物療法には何がありますか?

 慢性腰痛において薬物療法と併用すべき、あるいは優先すべき非薬物療法について解説します。

 参考文献では、薬物療法はあくまで補助的なものとして位置づけられており、以下の非薬物療法を中心に据えた治療計画が強く推奨されています。

 推奨される主な非薬物療法

 参考文献の中で繰り返し言及されているのは、以下の2点です:

• 運動療法(Exercise): 薬物療法に単独で頼るのではなく、運動を治療に組み込むことが重要です。

• 自己管理 / セルフマネジメント(Self-management strategies): 患者自身が痛みに対処し、生活を管理する戦略を持つことが強調されています。

非薬物療法の位置づけ

 参考文献では、治療の組み立て方について以下のような原則が示されています:

• 優先順位: ガイドラインでは、**非薬物療法を優先(Prioritize)**し、薬物療法はあくまでその補助(Adjuncts)として使用すべきであるとされています。

• 併用の重要性: 薬物療法(NSAIDs、オピオイド、抗うつ薬など)を開始する際には、常に運動療法や自己管理戦略と組み合わせるよう、患者に教育・助言することが推奨されています。

• 薬剤への過度な依存の回避: 薬剤のみに依存するのではなく、身体機能を維持・改善するための非薬物的なアプローチを統合することが、長期的な管理には不可欠です。

まとめ

 慢性腰痛の治療においては、まず運動療法や自己管理といった非薬物療法を基盤とし、薬物療法は特定の治療目標を達成するために期間限定で、補助的に併用するという考え方が、主要なガイドライン(米国家庭医学会など)で支持されています。

運動療法を薬物療法と組み合わせる具体的なメリットは?

 運動療法を薬物療法と組み合わせる具体的なメリットについて解説します。

 参考文献では、慢性腰痛治療において運動療法などの非薬物療法を**「優先すべき治療」、薬物療法を「補助的な治療」**と位置づけています。これらを組み合わせることには、以下のような具体的なメリットがあります。

薬物療法の「限定的な効果」を補完できる

 薬物療法(特に第一選択薬のNSAIDs)による鎮痛効果は、100点満点中6〜7点程度の減少という**「わずかな改善」**にとどまり、効果も短期的であることが示されています。

• メリット: 薬だけに頼る(sole reliance)のではなく、運動療法を組み合わせることで、薬では十分に改善できない痛みや身体機能の回復を補い、より確実な治療効果を目指すことができます。

薬剤の長期服用によるリスクを軽減できる

 NSAIDsには胃腸障害、腎機能障害、心血管リスクがあり、オピオイドには依存や過剰摂取のリスクがあります。

• メリット: 運動療法を併用することで、薬物療法を**「必要最小限の期間・用量」**に抑えることが可能になります。これにより、副作用や長期服用に伴う深刻な健康被害のリスクを最小限に留めることができます。

 「自己管理能力(セルフマネジメント)」の向上

 参考文献では、患者が薬に過度に依存するのではなく、自分自身で痛みを管理する戦略(自己管理)を持つことが重要視されています。

• メリット: 運動療法を通じて自分の体を動かし、管理する方法を学ぶことは、受動的な治療(薬を飲むだけ)から能動的な治療への転換を促します。これは、薬の有効性が不明確な長期的な視点において、症状の安定に寄与します。

  身体機能の維持と改善

    一部の薬剤(NSAIDsやオピオイド)でも身体機能のわずかな改善が認められることがありますが、その証拠は限定的です。

• メリット: 運動療法は身体機能に直接働きかけるため、薬物療法で痛みを一時的に緩和している間に運動を行うことで、より効果的に筋力や柔軟性を維持・改善し、日常生活への復帰を促すことができます。

  結論としての治療戦略

    主要なガイドライン(米国家庭医学会など)では、**「まず運動療法や自己管理を優先し、薬物療法はそれらを助けるための補助として、具体的な目標(痛みや機能の改善)を定めて短期間併用する」**というアプローチが推奨されています。

 このように、運動療法と薬物療法の併用は、単に「痛みを抑える」だけでなく、**「安全性を高めながら、長期的な生活の質(QOL)を改善する」**ために不可欠な戦略といえます。

セルフマネジメントには具体的にどのような戦略がありますか?

 慢性腰痛における「セルフマネジメント(自己管理)」の戦略について解説します。

 参考文献において、セルフマネジメントは薬物療法よりも**「優先すべき非薬物療法」**の中核として位置づけられていますが、その具体的な手法については「運動療法との統合」や「目標設定」といった治療の進め方に関する記述が中心となっています。

 具体的な戦略は以下の通りです。

 運動療法との統合 (Integration with Exercise)

 セルフマネジメントは単独で行うものではなく、運動療法と組み合わせて実践することが繰り返し強調されています,,。単に薬を飲むという受動的な姿勢ではなく、自ら体を動かすことを生活に取り入れることが戦略の基本となります。

 現実的な目標設定 (Setting Realistic Goals)

 薬物療法を開始する際やセルフマネジメントを実践するにあたって、「痛み」と「身体機能」の両面において、具体的かつ現実的な目標を立てることが推奨されています,。

• 「全く痛くない状態」を目指すのではなく、どの程度動けるようになりたいかといった機能的な目標を明確にすることが、自己管理を継続する助けとなります。

 薬物への過度な依存の回避 (Reducing Sole Reliance on Meds)

 「薬を飲めば治る」という考え方(薬物への唯一の依存)から脱却し、薬はあくまで活動を助けるための「補助(Adjuncts)」であると認識することも重要な戦略の一つです,。患者自身が、薬物療法の効果は「わずかな改善」にとどまる可能性があることを理解し、自発的な管理を優先するように教育を受けることが含まれます,。

 頻繁な再評価とモニタリング (Frequent Reassessment)

 設定した目標に対して、現在の治療や活動がどれだけ効果を上げているかを定期的に振り返り、再評価することが求められます。効果が見られない治療(特に副作用のリスクがある薬物療法など)を漫然と続けないための自己モニタリングも戦略の一部です。

薬物療法を中止するタイミングや判断基準を教えてください

 慢性腰痛の薬物療法を中止するタイミングやその判断基準について解説します。

 参考文献では、薬物療法はあくまで「補助的」なものであり、**「期間限定の試行(Time-limited trials)」**として行うべきであると強調されています。具体的な中止のタイミングや判断基準は以下の通りです。

あらかじめ設定した目標に達しない場合

 薬物療法を開始する前に、痛みと身体機能の両面で**「具体的かつ現実的な目標」**を設定することが推奨されています。

• 判断基準: 設定した目標(例:痛みの一定以上の軽減、日常生活動作の改善など)が達成されない場合、その薬剤を継続する妥当性が低いため、中止を検討します。

• タイミング: 多くの薬剤の試験データは短期間(数週間から3ヶ月未満)のものです。そのため、数週間から数ヶ月の試用期間中に効果を再評価し、目標未達であれば中止します。

副作用のリスクが有益性を上回る場合

 すべての薬剤において、安全性への懸念が中止の重要な判断基準となります。

• NSAIDs: 胃腸障害、腎機能障害、心血管リスクが認められるため、これらの兆候がある場合やリスクが高いと判断された場合は中止や変更が必要です。

• オピオイド: 吐き気、便秘、めまいなどの副作用に加え、依存や過剰摂取のリスクがあります。有益性がこれらのリスクを正当化できない場合は中止すべきです。

• その他の薬剤: 抗うつ薬や筋弛緩薬による鎮静(眠気)やめまいなどが、患者の耐容性を超える場合も中止の対象となります。

 計画された「短期間」が経過したとき

 慢性腰痛に対する薬剤の長期的な有効性と安全性については、多くの薬剤で十分な証拠が不足しています。

• 原則: **「効果のある最小用量を、必要な最小期間だけ使用する」**ことが基本原則です。

• オピオイドの例: 6ヶ月を超える長期使用に関する有効性・安全性のデータは欠如しており、定期的な再評価を行い、漫然とした継続を避ける必要があります。

• 筋弛緩薬の例: 主に急性期や慢性腰痛の急性増悪時の「短期間」の使用に限定されており、慢性的な日常使用は推奨されていません。

  頻繁な再評価(モニタリング)の結果

   参考文献では、**「頻繁な再評価(Frequent reassessment)」**が繰り返し推奨されています。

• 定期的に痛みや身体機能の状態をチェックし、薬物療法の効果が臨床的に意味のあるレベル(例:NSAIDsでは100点満点中6〜7点程度のわずかな改善)に達していないと判断されれば、中止して他の療法(特に非薬物療法)への注力を検討します。

  まとめ

    中止の判断基準をまとめると以下のようになります:

• 目標未達: 事前に決めた痛み・機能の改善目標に届かない。

• 安全性の問題: 副作用が出現した、または長期服用による健康リスク(胃・腎・心血管など)が高まった。

• エビデンスの限界: 試験データが存在する期間(通常数週間〜3ヶ月)を超えても改善が停滞している。

 医師はこれらの基準に基づき、患者と共有した**「治療合意(Treatment agreements)」**やモニタリング計画に沿って中止や薬種変更の判断を行います。

参考文献 済み

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[11]C. L. Romanò, D. Romanò, and M. Lacerenza, “Antineuropathic and Antinociceptive Drugs Combination in Patients with Chronic Low Back Pain: A Systematic Review,” Pain Research and Treatment, vol. 2012, pp. 154781–154781, Apr. 2012, doi: 10.1155/2012/154781.

[12]B. Morlion, “Pharmacotherapy of low back pain: targeting nociceptive and neuropathic pain components,” Current Medical Research and Opinion, vol. 27, no. 1, pp. 11–33, Jan. 2011, doi: 10.1185/03007995.2010.534446.

[13]B. W. Koes, D. Backes, and P. J. E. Bindels, “Pharmacotherapy for chronic non-specific low back pain: current and future options.,” Expert Opinion on Pharmacotherapy, vol. 19, no. 6, pp. 537–545, Mar. 2018, doi: 10.1080/14656566.2018.1454430.

[14]R. Rauck, C. A. Gargiulo, G. E. Ruoff, T. J. Schnitzer, and R. G. Trapp, “Chronic low back pain: new perspectives and treatment guidelines for primary care: Part I.,” Managed care interface, vol. 11, no. 2, pp. 71–75, Feb. 1998.

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院長の新幡です

 長引いた痛みを一人で治すのは困難なことが多いです。

 困ったときは自身で判断せずに適切な処置を受けるために専門家に相談しましょう。

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